とある楽器店での点検
「リペア係」:サックスを持ちキーをパタパタ動かしながら神妙な顔をしている。
「お客様」:あの~・・いかがでしょうか?
「リペア係」:ん~・・良くないね。これじゃ鳴らんでしょ?全体的に良くない。
「お客様」:はぁ・・そうなんですか・・。少し前に別な店で調整していただいたのですが・・。少し心配で見ていただいたのですがやはり駄目ですか・・・。
「リペア係」:駄目だね。全然良くない!どうやらその店の調整のせいでさらに悪くなったようだ。
「お客様」:特にどこが悪いとか具体的に何かありますか?
「リペア係」:特にhighA–>highBの繋がりが良くない、これじゃ早いパッセージで音がつながらないでしょ?!
[お客様」:はぁ・・そうなんですか・・。でも、結構普通に吹けてましたけど・・・。
「リペア係」:いや!いかん!しかも「キーオイル」も挿されて無い感がある!こりゃオーバーホールしないと駄目だ!
「お客様」:・・・いあ、前の店で一度分解してもらってますのでオイルは挿されているかと?
リペア係:お客様を睨みつける!
「お客様」:あ~・・いや・・・その・・作業見てないので・・きっと挿されてないのですね~・・・。
「リペア係」:当たり前だ!俺様ぐらいのベテランでプロ中のプロにかかれば触っただけで全てがわかるのだ!しかも音質のイメージからあなたのクセから性癖まで解る!
「お客様」:ええぇ~・・・なんとそこまで・・・。さすが〇〇楽器店の大物リペアマン。数々のプロから絶賛されたお方!申し訳ございません!!
「リペア係」:ふふ・・本来なら君みたいな音楽会の底辺にいるような人の楽器なんぞ紹介が無ければ見る事なんぞないのだよ。有難く思うのだな!。
「お客様」:そうですよね・・・申し訳ございません・・受けていただきありがとうございます・・。そういえば前の店ではなにか細長いライトみたいな物を楽器に入れて点検しておりましたが・・使われないのでしょうか?・・。
「リペア係」:なぬ!まだ言うか!この出来損ないのクソ野郎!俺様が駄目と言ったら駄目なんだ!ライトだと~・・・・・そんな素人みたいな物を俺様が使うか?!俺は触ったら解るんだよ!
「リペア係」:こうやってな。キーをだよ閉じた閉じたときの感触。キーの重さとその全体のバランス。微妙なゼロコンマ〇〇〇〇ぐらいの精度で解る!しかも、俺様ぐらいになると自然界の中性エネルギーが指先に作用しクソ低俗リペアマンにないオーラが全てを教えるのだよ!
「お客様」:ははぁー!!!申し訳ございません!申し訳ございません!
お客様は座っていたイスから転がり落ち床に頭をこすりつけ土座下している
「リペア係」:解ったか!この下郎!・・・・。ん?この楽器管体曲がっているな?
「お客様」:え?・・そ・・そう?・・・。
リペア係、お客様を睨む
「お客様」:あ~そうですよね・・微妙に・・少し・・ははは・・。
「リペア係」:だろ!お前ごときに解らなくても何十年もこの仕事をし何万本ものサックスを扱った俺様には見える。俺様以外には神様しかわからんがな!
「リペア係」:んむ~・・こりゃ結構かかるね・・。すべてをやり直さなきゃいかんしね。
「お客様」:お・・おいくらぐらい・・かかるでしょうか?・・・。
「リペア係」:まぁざっと見て35万ぐらいかな?
「お客様」:え!そんなに!35万!そんな!・・かなり予算外で・・どうしよう・・・。
「リペア係」:恨むなら前に調整を出した店を恨むのだな。おかげで全てがやり直し。しかも、どんどん悪化していく癌を植え付けられたようなものだ!他の店はそうやってサックスにウィルスをぶち込んでリペアに頻繁に来るよう仕向けているんだよ。うちの店はお客様第一にやっている老舗なんでそんな事はしないよ。
「リペア係」:まぁ35万なんざ出せないだろ?んじゃお前の予算内で修理してやろう。幾らまで出せる?
「お客様」:・・・え・・・と・・・ジュ・・ジューマンまでなら・・・。
「リペア係」:んじゃ・・管体曲がりは許してやろう。10万じゃ数個のタンポしか交換できないが他の店で植え付けられたウィルスだけは取り除いてやろう。
「お客様」:は!ありがとうございます!よろしくお願いいたします!
「リペア係」:よしよし。これでお前もスーパーサクフォニアーになれるぞ。頑張って練習に励め。今後くだらん地方の店には楽器見せるなよ。うちに来ればスーパーサクフォニアーだ!
あ~・・すごいなぁ~。僕もこんなクソリペアマンになりたいわ~。んでウハウハ儲けるんだ~!